2024年1月17日、ほしおさなえさんの新刊小説『まぼろしを織る』(ポプラ社)が発売された。
表紙には、植物染・手織の共同ブランド「hikariwomatou 光をまとう」の制作風景を、写真家・桑島薫さんが撮影した写真が使われている。
著者は、シリーズ累計33万部、「読書メーター オブ・ザ・イヤー2020」人気シリーズランキング1位など、大反響を呼んだ「活版印刷三日月堂」シリーズを手掛ける人気作家。作品では活版印刷のほか、和紙や連句など、古くから伝わる手仕事を題材にしながら人の営みを描いてきたことで知られる。
本書は、そんな著者が「染織」を通じて、生きる意味を失った女性が「生」と向き合う再生を描く物語。植物から糸を染めて布を織る「染織」を題材として、「人の生きる意味」という深いテーマに向き合う内容となっている。
<あらすじ>
母の死をきっかけに生きる意味を見いだせなくなった槐は、職も失い、川越で染織工房を営む叔母の家に居候していた。そこに、水に映る風景を描いて人気の女性画家・未都の転落死事件に巻き込まれ、心を閉ざしていた従兄弟の綸も同居することに。藍染めの青い糸に魅了された綸は次第に染織にのめり込んでいく。
ある日、槐の前に不審な男が現れ、綸が未都の最後の言葉を知っているはずだと言う。未都の死の謎を探りながら、槐は自分の「なぜ生き続けなければならないのか」という問いと向き合っていく――。
染織工房が作り上げるのは、蚕の命を使った糸と、植物の命を使った染料で織り上げた布。伝統工芸の手仕事がもつその重みが、漠然とした不安から、槐たちを少しずつ解放していく。働くことの意味、生きることの意味を再認識させてくれる1冊だ。
■ほしお・さなえさんプロフィール
作家。1964年東京都生まれ。1995年「影をめくるとき」が群像新人文学賞小説部門優秀作に。おもな著作に「活版印刷三日月堂」「菓子屋横丁月光荘」「紙屋ふじさき記念館」などの文庫シリーズがある。
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